第八章 夏は草に埋もれて 三

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「すいません、シートベルトをお願いします」  道路に出ると、家に向かって走り出す。 次第に民家がなくなり。田ばかりになり、道が細くなってゆく。 「いいね。こんな道を自転車で走りたい」  両側に果てしなく田があった。 ここを自転車で走るのは、恐怖であるのだ。 「……避難場所もないくらいに、強い風で自転車ごと、田に落とされそうになりますよ」  凄い風が吹いたりするのだ。 それに、蚋が陽炎のように固まっていたりする。 イナゴも弾丸のように飛んでくる。 「氷花君の虫嫌いの理由が、今、少し理解できたよ」  虫というのは、人に攻撃してくるのだ。
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