第八章 夏は草に埋もれて 三

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 出店が並び、綿菓子やリンゴ飴が光っていた。 こんなに、地上が綺麗だったのを、俺は知らなかった。  花火の頃になると、どうしてなのか、泣きたくなった。  木から降りて家に帰ると、どこに居たのと、両親に聞かれた。 俺は、祭りを見ていたとだけ言った。 あちこちから、俺の所在を聞かれていたという。 「信哉さん、神社です」  車椅子に信哉を移し、運搬装置は降りる時のため、そのままにしておく。  神社は森を後ろにし、黒い小さなものであった。 でも、時折は参拝客もいるので、掃除はされている。 「お賽銭を入れましょうか」  ここの湧水も美味しいのだ。 手を洗う前に、散々飲んでしまった。
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