第九章 夏は草に埋もれて 四

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 ここは田舎の神社なので、大層な伝承などない。 この神社の謂れは、帝の寵愛を受けた姫様が重い病にかかり、祈祷を受ける。 すると、北の果ての空の神社に神水がある、その水を飲めば完治すると言われた。  ここに館を建て、毎日、水を飲んだら完治して都に戻った。 感謝として、この神社に宝玉を奉納したという内容である。  宝玉には、違う解釈があって、姫はここで子を産み置いていったという説もある。  そして、帝はこの地にやって来た時に、自分の子と出会い、 その余りの可愛さに攫っていってしまったと、蛇足で残っていた。
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