第九章 夏は草に埋もれて 四

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 そもそも、帝がこのど田舎に来ない。 そして、帝ならば、子供を攫わなくても交渉すればいいだろう。  そして、可愛い子がこの神社に来ると、神様に連れてゆかれるという、 都市伝説のようなものになった。 「そういう伝承なのか。それで、実際に失踪はあったの?」  俺は、神社から田の景色を信哉に見せた。一面の田で、はるか海まで続いている。 「まあ、駆け落ちとかね。あったみたいですよ」  それに、若い女の子が、この誰もいない山には来るなという、 戒めのようなものなのであろう。 襲われでもしたら、誰も気付かない。
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