第九章 夏は草に埋もれて 四

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「うん。氷花君は俺に、神社の景色を見せたかったの?いい景色だよね」  信哉は、上から見る田に感動していた。 そして、俺が登った御神木の写真を、大量に撮っていた。 「確かに、ここに、幼い氷花君がいたら、攫いたくなるよね……」  どういう子供を想像しているのか不明であるが、俺は、誰にも攫われなかった。 それ処か、親を悩ませる程のやんちゃだった気もする。 「……そんな可愛い子供ではありませんでしたよ」 「まあね、見ていれば想像できるよ。バカな子程、かわいいからね…… 氷花君、かわいかっただろうね……」  俺は信哉を凝視してしまった。 遠回しに、バカと言われた気がする。 バカは否定できないが、親に可愛がられてはいない。
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