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「お寺ですか……」
珍しい寺ではなく、普通の寺であった。観光するような場所ではない。
でも、希望通りに行ってみると、信哉は線香を出していた。
「線香ですか?」
「氷花君の先祖にご挨拶をする」
俺の先祖は、ここに眠っているが、信哉には関係がない気もする。
でも、墓に案内すると、本当にお参りしていた。
「田舎では、まず、墓石を洗い、掃除をします」
綺麗に洗って、タオルで拭き取ってから、線香をあげる。
枯れ葉も綺麗に掃いておく。
「よし!」
信哉は、杖で立ち上がると、墓石の前で手を合わせた。
「静香の恋を実らせてください」
願い事をするならば、線香よりもお賽銭ではないのか。
それに、先ほどの神社で願ったほうが良かった。
「浅見さんの婚約者は、そんなに大変な相手なのですか」
俺も線香をあげると、墓石洗いグッズを片付けた。
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