第九章 夏は草に埋もれて 四

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 大きな庭に、様々な花が咲いていた。 いつも、相田の家には花が咲いていて、木の実が成っていた。 庭は昔のままで、何の変わりもない。 「こんにちは」  開いたままの土間に声を掛けると、中から女性の返事が聞こえた。 暫し待ってみると、後ろから作業着の女性がやってきた。  帽子を被っていて顔の判断ができないが、記憶の限りでは、 この人は相田の母親であった。 幼い頃は、よく、蒸したパンを貰った。 蒸しパンが好きだといい、よく野菜入りにものも作っていた気がする。 「氷花です。実家に来たので、寄ってみました」 「護浩ちゃん?あら、今も可愛いのね」  やはり、相田の母親であった。
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