第十章 夏は草に埋もれて 五

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 相田との約束は、見つけたら燃やすであった。 相田は、最初から俺が、この手紙を見つけると信じていた。  でも、相田が本当に見つけて欲しいのは、手紙ではない。 相田自身ではないのか。 「間違った。俺は、庭を探すのではない」  雪が降ったら、春まで見つけられない物は多い。 遭難者もそうで、春に見つかる。  夏草は、手入れをしていない場所では、あっという間に伸びる。 山なども、道以外は迷宮になってしまう。 「夏は草に埋もれる……」  俺は、端末を出してくると、昔の写真を眺めてみた。 小学校までは、相田との写真も多い。 高校となると、相田との写真はかなり少ない。
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