第十章 夏は草に埋もれて 五

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「氷花君。嘘が下手だよね。遠見さんも言っていたよ、氷花君が目を逸らして上の空の時は、 何か隠している」  そこで、信哉を見ようとすると、壊れた機械のようになってしまった。 首がスムーズに動かずに、ギクシャクしてしまう。 「……俺の兄貴は、何でも出来て優秀で、いつも比較されてきた。 兄貴は、でも、大企業や官僚には興味がなくて、自由にできる貿易商に進んだ」  比較というのは、兄の自由さが治らないけど、次男はしっかりしているという比較も含む。 「次男同士だから、気が合うでしょ」  長男は、信哉が田舎に行くと言うと、金よりも土産だと、 まるで未開の現地人に会うようにアドバイスしてきたらしい。 ここは、未開ではあるが、ちゃんと通貨はある。
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