第十章 夏は草に埋もれて 五

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「俺は、そんな兄貴を見ていて、自由はダメだなと思い、できない」  次男は、色々と気を使っているのだ。 ちゃんと、両親を見ていて、心配かけまいと思ってはいる。 「……氷花君、何があったの?」  全く違う話をされていたというのに、どこか、追い詰められていた。 信哉は、遠見と違う意味で、聞くのがうまい。 「……、……遺書でした」  しかも、暗号となった遺書であった。 その内容は、公表できない。 「その、理由が問題でした」  春一の父親が相田とは、秘密にしていなければならない事だろう。 「遺体のありそうな場所を特定したので、明日、行ってみようかと思います」  そこで、信哉がニコニコとしていた。 手には携帯電話を持っていて、遠見に送信されていた。
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