第十章 夏は草に埋もれて 五

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 そこは、前例に淡谷がいるので、 女性は好きな人の子供を、どうしても欲しい時があると理解した。 「本能なのかな。この人の子供を産む!としか考えられない」  信哉に言われても、微妙な気がする。  でも、子供の存在で、相田は死の決意をしてしまう。 これは罪なのだと、そして春一にだけは知られてはいけなかった。 「この遺書は、燃やしましょう」  そこで、遠見が悲鳴というのか、奇声を上げていた。 「それは、燃やしてはダメ!」  遠見は誰にも見せずに保管するので、持って帰って来いという。 相田の暗号を、自分の目で見たいらしい。
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