第十章 夏は草に埋もれて 五

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「氷花君の見張り役だと、静香からもきつく言われているからね」  俺は、一体どういった存在なのであろうか。見張りなどは必要としない。 「……俺は一人で行きます!」  ここで、引き下がってはいけない。  そこで母親が、夕食が出来たと呼んでいた。 時計を見ると、随分と早い時間であるが、有希の声も聞こえていた。 「はい、今、行きます」  田舎での楽しみは、皆で揃っての食事でもある。親の楽しみを減らしてはいけない。 信哉を支えて居間に行くと、居間と隣の仏間の戸を外して、大広間にしていた。 そこに、卓袱台を並べている。 更に、人が加わり、茶の間の戸も外した。
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