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しかし、玄関横の曇りガラスに、黒い影が見えていた。
真っ暗ではあるが、それが人影であると分かる。
「誰か、いますか?岩崎なのか?」
稲光が走り、玄関にくっきりと人影が浮かび上がった。
でも、中に入ってくる様子はない。
岩崎ならば、玄関の鍵を持っている筈だ。
立ったままではなく、鍵を開けて入ってくる。
「楽斗……さん?」
返事を待っていると、後ろから慶松の携帯電話が鳴る音がしていた。
「瑠璃子さん……」
慶松に掛けていたのは、瑠璃子であった。
瑠璃子のごめんなさいという言葉が、雨音に消されずに廊下に響いていた。
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