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「良かった」
でも、感想を言ったのは楽斗であった。
「孝弘君と、宍戸君を殺さなくて良かった……」
楽斗は、安堵しているような声であった。
「死のプログラムとは、自然界にある弱肉強食の世界を抜けようとした人類が、
選んでしまった不幸であった。
人は弱者を助け、病気を無くし、誰でも生きられるという世界を作る。
そこで生まれたのは、自ら死を選ぶという滅びであった」
楽斗の影が揺れると、小さくなった。
楽斗が去ってゆくようで、俺はドアを開こうとする。
「氷花、B君は刃物を持っている!」
俺の事を、慶松が抱きとめていた。
俺は、慶松を振りほどくと、ドアの鍵を必死にまわす。
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