第二十二章 遠い雷鳴 二

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「良かった」  でも、感想を言ったのは楽斗であった。 「孝弘君と、宍戸君を殺さなくて良かった……」  楽斗は、安堵しているような声であった。 「死のプログラムとは、自然界にある弱肉強食の世界を抜けようとした人類が、 選んでしまった不幸であった。 人は弱者を助け、病気を無くし、誰でも生きられるという世界を作る。 そこで生まれたのは、自ら死を選ぶという滅びであった」  楽斗の影が揺れると、小さくなった。 楽斗が去ってゆくようで、俺はドアを開こうとする。 「氷花、B君は刃物を持っている!」  俺の事を、慶松が抱きとめていた。 俺は、慶松を振りほどくと、ドアの鍵を必死にまわす。
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