第二十二章 遠い雷鳴 二

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「…………」  見慣れた靴がそこにある。 ふらふらと前に進むと、慶松もその足に気がついた。  くたびれたスポーツシューズで、でも丁寧に履いていた。 濡れてしまっているが、雨はいつでも降る。 靴など、乾かせばいいだけだ。  だから、起き上がって欲しかった。  横に座ると、手を握ろうとしてみる。 しかし、救急隊に後ろに下げられてしまった。 「心肺停止しています。全身に火傷、雷に打たれた模様……」  ここに雷が落ちた後に、俺達は会っているのではないのか。 岩崎の、冷たいキスが甦る。 でも、目の前の岩崎は、燃えてしまっていた。
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