第二十二章 遠い雷鳴 二

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 微かに焼け残ったレインコートも、腕の時計も、岩崎のものであった。 ここに倒れているのが岩崎ならば、俺は幻と会っていたのであろうか。 「……岩崎……」  他に一名、一緒に燃えていた。 それは、確証は無いが楽斗である気がする。 手に刃物を持っていたようなので、気付いた岩崎と乱闘になったのではないのか。 「岩崎、教えて。岩崎、目を開いて!」  慶松が俺を支えているが、やはり動揺していた。 俺を押さえている、慶松の手も震えていた。  救急隊が、岩崎と楽斗を運んでゆく。 「待って岩崎!行かないで!」  行ったら、もう帰って来ない。
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