第二十二章 遠い雷鳴 二

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 後部座席に乗り込むと、まだ雨の残る、夜の街を見ていた。 停電は終わり、街に電気は戻ってきている。 しかし、街灯だけで、店はどこも閉まっていた。 「保険金を掛けていた。岩崎君も、佐倉君もだよ。岩崎君は両親を受取人にしていた。 佐倉君は、相田美優さんを受取人にしていた」  又、保険金であるのか。 しかし、楽斗が美優を受取人にしていたのには、少し驚いた。 楽斗は、美優に自分の存在を教えたかったのかもしれない。  人の命が金になる時、何か世界の歪みを感じる。 生きてゆくためには、金が必要だとは、俺もよく分かっている。 でも、命が金になる時、人は狂ってしまう気がする。
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