第一章 木の上の神様

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「柴田、帰れるかな、これ……」  一緒に出張に来ている、営業一課の柴田に声を掛ける。 今回は、この柴田と俺の、二人で出張に来ている。 「……無理かもね」  ここで野宿というのも辛い。 タクシーを見つけ乗り込むと、あちこち冠水していて、遠回りになった。  しかし、駅前を抜けると、そこそこ繁栄した街になっていた。 駅前が、神社であったので、森になっていたらしい。  目的地に到着すると、雨はやや小降りになった。 木々の茂る門の中まで、タクシーは入って行く。 「ここは、老舗の機械工場でね」  老舗ではあるが、老朽化により閉鎖されようとしていた。 K商事は品物をこの工場から購入していて、どうにか移管先を探したい。 しかし、ここの工場長は、頑なに移管を断ってきていた。 そこで、現場を訪ねてみたのだ。
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