第三章 木の上の神様 三

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「喜島は、甘いものが好きでね……」  喜島とは、K商事の社長であった。 「氷花君、クッキーも貰ってゆくよ」  川越は、祠堂の工場を知っていて、閉鎖は決定だと伝えると残念がっていた。 手堅い製品で、安心して売れるものであったという。 「祠堂さんも、幾度も、倒産の手前までいっていたからね。 経営がね、下手だったかなあ」  製品作りに特化する道があれば、良かったのかもしれない。 「移管をするのでしょ。喜島に声を掛けておくよ」  川越は、喜島の叔父にあたる。  川越が去ってゆくと、浅見が俺を見ていた。 「川越室長は、社長に呼ばれていたのですが、昨日から逃げていました。 よく、行く気になったものです」  川越が呼ばれているのは、会社に問題が発生しているという事であろう。
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