第三章 木の上の神様 三

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「君島教授は、数式の人で、理論の人でした。 物に美しさを感じるという面を見た事がなかった」 「もしかして、教え子なのかな?」  俺が頷くと、温科がため息をついていた。 「すごい大学の出身だよね……」 「慶松もですよ」  再び、温科がため息をついていた。  俺が席に座ると、まだ浅見が俺を見ていた。 浅見の兄、信哉(しんや)と旅行をする約束をしているが、まだ計画していない。 その事を、浅見は怒っているのであろうか。  お土産を渡して、機嫌を取ろうかとして、浅見の潔癖症を思い出した。 「浅見さん……手作りって大丈夫なの?」  団子やクッキーは、食べられるのであろうか。 「知らない人の手作りは、食べられません」  やはり、浅見には手作りのハードルは高かった。
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