第三章 木の上の神様 三

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 教え子の女子生徒が、辺見(当時の佐藤)に好意を寄せ付きまとっていた。 それを、辺見はきつく叱り、女子生徒が自殺未遂したらしい。 その翌日、男子生徒がナイフで切り合いになった。  新聞では、女生徒に片思いだった二人が、互いに罵って喧嘩になったという。 「でもね、これには裏があってね」  辺見は女子生徒を叱ったが、 それでも、それはいつもの事で、女子生徒は気にしていなかったらしい。 それを、この男子生徒二人が責めて、女子生徒を自殺未遂に追い込んでしまった。 そして、自分達のせいで、先生が困っていると、この二人は喧嘩になった。 「新聞では男子生徒は、女子生徒に片思いとあったけれど、 これは、この三人が先生に片思いだった」  それは、その後に分かる。 この三人は、教職を追われて、更に妻に首吊り自殺されてしまった先生の元を、 幾度も訪ねていた。 その時の女子生徒が、辺見でもあった。
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