第三章 木の上の神様 三

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 土地の売却益もあり、どうにか退職金に上乗せも検討できる。 従業員は、祠堂を恨んではいなかった。  しかし、仕入先からは、激しいバッシングを受けていた。 「そうだね、会社というのは、内だけに留まらず、外にも影響が出てくる」  従業員と、関わった企業を含めて、会社は成り立っていた。 祠堂の工場が無くなる事で、閉鎖に追い込まれた会社に、保障は何もない。 「だから、祠堂さんは自殺してまで会社を守ろうとした。 関連する会社の事まで考えてしまうと、どんどん、追い込まれてしまうのだろうね」  自分の家族の幸せだけ考えていては、社会からは弾かれてしまうのか。 啓一を見ていると、父親を尊敬していたが、どこか恨んでもいた。 結局、今、工場を閉鎖するということは、父親は問題を先延ばしにしただけであったのだ。
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