第三章 木の上の神様 三

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「俺は、農家の出身なので、会社って難しいですよ……」  自殺してまで、会社を守ろうと考える所が、どこか俺には理解できないのかもしれない。 「そうだねえ、親の職業というよりも、氷花君はマイペースで挫けないからねえ……」  そこで、聡子が紅茶をいれてくれた。 クッキーには紅茶がいいというが、俺はコーヒーの方が良かった。 「この祠堂の家は、保険金で保っていた」  でも、啓一を見ていると、保険金欲しさに殺しをするタイプでは無かった。 多分であるが、佳嗣も保険金よりも、堅実に生きてゆくタイプである感じがする。 「まさか、弥勒が関わっているのかな」  宍戸が弥勒を作ったので、昔の自殺は関係ないのであろう。 「日本にはね、自殺の文化があるでしょう。腹切りだよね。まあ、切腹だよ」  日本には、自分の無罪を主張して、死ぬという風習がある。 死んでしまったら、無罪でも意味は無いかと思っていたが、 残された家族には重要な事であった。 親が無罪を主張して切腹で死んだ場合は、息子には、その土地、 その配下で生きてゆける可能性が残る。
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