第四章 木の上の神様 四

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 天井を見ていると、岩崎は天井に富士山を貼っていた。 風呂の天井の富士山には、俺は気付いていなかった。 「……富士山?」 「ああ、岩崎の故郷はどこからでも、富士山が見えるのだそうだ。それで、上に富士山」  慶松は、少し無口になっていた。俺は、祠堂の家の事を少し話す。 「……従業員も家族に思える。幸せになって欲しいよね。 大企業の経営者は、部門や系列会社を統合だとか、廃止とかで潰してゆくけどね」  数字を見て決定してゆくので、大企業は存続できている。 けれど、昔の日本の企業は、従業員も家族のようだったという。 「皆で会社を作っていた」  だから、家族を守って死んでゆくという気持ちは、慶松には分かるらしい。
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