第四章 木の上の神様 四

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「本当だ……入っている」  自分で動いてしまい、頭を抱える。 入ったはいいが、あまり慣らしていなかったので、動くと辛い。 腹の中に、生き物がいるようであった。 「……でも、動かないで。吐きそう」  吐きそうになったのは、久し振りであった。 内臓が、ぐにゃりぐにゃりと動いて、かなり気持ち悪い。 これは、人によって異なるのかもしれないが、吐くというのは、余り聞いた事がなかった。  多分、俺は腹の中に異物があるという思い込みで、気持ち悪くなってしまうのだろう。 これは慶松なのだと、自分の気持ちに決着をつけようとする。 「氷花、きゅっと締まっていて。すごく気持ちいいよ」  慶松が、ぎゅっと抱きしめてくれる。すると、身体の奥で何かが締まった。 そして、慶松が中にいることを許した。
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