下駄箱

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 これは僕が実際に体験したことです。    地方の大学を卒業後、僕は東京都内にある会社に就職して、1人暮らしを始めました。  安月給なのに、都心に近い所に住みたかったので、当然のように、家は木造のぼろアパートでした。  僕の住んでいた部屋は2階の東側の角部屋。1DKで日当たりはよくて、古いことを除けば、快適でした。もちろん、瑕疵物件ではありません。  不動産屋さんに連れられて、初めて部屋を見に行った時、玄関の土間のすぐ前の床に、桐の下駄箱が置いてありました。幅が1m、高さが70~80cmくらいあり、分厚い桐の板を組み合わせて造ったような構造で、下部の4本の脚で支えていました。  見るからに重そうでした。  あちこちに多少のキズなどはありましたが、全体的にはきれいで、まだまだ十分に使えるシロモノでした。  「ずっと前の住人の方が置いていったんですよ。もし入居されたら、ご自由にお使いくださいね」  案内をしていた不動産屋のおばちゃんが、愛想笑いを浮かべて説明していました。  僕はその日のうちに契約して、1週間後には住み始めました。
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