無題

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『タイトル』は、不思議な物語だった。 本の中のことは、大抵不思議なことで、現実にあり得そうでないことなのだろうが、この本は…… 「まるで、僕みたいだ」 主人公は、冴えない高校二年生。得意科目は国語で、運動はあまり好きではなく、部活に入っていない。友達は少ないが、別にそれで苦労したことはないし、今だって気の合うひととご飯に行くくらい。当たらず障らず、僕と同じ性格。 物語自体も僕の日常そっくりで、つまらないのだが安心するし、その逆でもある。 もしかして、この本は手に取った人の人生を綴っている……とか? まさか、そんな。 僕は自分の考えをすぐに否定した。僕の人生で、そんな物語のようなことはあり得ない。 そう思っていても、指はページをめくる。主人公の過去よりも、未来をはやく見たかった。 主人公は、友達に尋ねられていた。カノジョがほしくないか? と。 主人公は答える。 好きなひとはいないが、気になるひとはいる。 気になるひと…… 僕は、昨日本屋で出会った女性のことを考えた。 瞬間、なんだか恥ずかしくなった。でも、なぜか想像は止められない。 名前。そうだ。名前は…… ネームプレートをしていたことを思い出す。が、僕は天井を仰いだ。 「しまったぁ……肝心の名前見てなかったぁ」
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