名前

2/3
前へ
/12ページ
次へ
ベッドの上で仰向けになった僕は、考える。 僕は、どうしてあの本屋に入ったのだろう? 看板はなく、よく本屋だと店前に出されているカートもない。入り口からパッと見ただけだと本屋だと分からず、通り過ぎそうな【ななし書堂】。 それでも、僕はここを本屋だと確信して中に入り、あの本を見つけた。「タイトル」というタイトルの本を。 そして、彼女と出会った。 これは偶然なのだろうか? ごろんと寝返りを打った。 考えても答えがあるわけではないーーそう思い直した視線の先に、机の上に置きっ放しにしたあの本があった。 今までの僕が描かれた物語。あの先はまだ読んでいない。 今なら、以前彼女が僕に訊いたことの意味が分かる。 『続き、読みましたか?』 彼女もあの本を読んだのではないだろうか? そして、僕と出会うことを知った。でも、彼女もまた続きを読んでいない。 読むことは、未来を知ることになるから。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加