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 思えば最初から"予感"のようなものがあった。  鶴橋駅の南のコインパーキング。ここはいつも混雑していて、入り口からは遠い場所にしか駐車することが出来なかった。最悪、空くのを待つこともある。なのにこの日に限って、パーキングの入り口近くに愛車を停めることが出来た。  おっ、ついてるやんけ!! そう口から言葉を吐いたかもしれない。  ここから得意先までは遠い。商品の入っている段ボールを台車に積み、歩行者を気にしながら鶴橋の駅前を歩かなければならない。全体的に考えればたった駐車位置からパーキングの出口までの距離の差だけなのだが、それでも距離が縮むことが嬉しいことに違いはない。  とにかくボクは意気揚々と愛車の保冷車のドアを空け、台車を下ろし、一つずつ商品を台車に積んでいった。
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