第2章 故郷

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「…ねぇ!マリー!(小声)」 薬屋の娘であるマリーが村外れの野原で薬草摘みをしていると、なにやら空耳が聞こえて来た気がした… 「気のせいかしらぁ…リリアンの声を聞いた様なぁ…」 マリーは薬草摘みの手を止めて辺りを見渡す… マリーが立ち上がった時に肩まで伸びたサラサラなシルバーブロンドの髪が野原から吹く風になびいている。 聞こえて来るのは風の音だけだ。 「あぁ…風の妖精さんが私を呼んでいたのね…」 マリーは自らそう結論付けて再び足元の薬草を摘もうと手を伸ばした時、地面に生えた藪の中からマリーの手を何かが掴む… 「大地の妖精さん?」 『誰が妖精よ!そんなピンポイントの名前で名指しで呼ぶ妖精が居る訳が無いでしょ!』 膝丈位の藪の中からマリーの手を掴んだのは首都から指名手配されているリリアン・ローズであった。 「あらぁ…リリアン久しぶりですぅ。そのメイクは都会の流行かしら?ずいぶんとワイルドですの。」 「うっ、いやちょっとヤバい状況なんで迷彩塗装をね。この迷彩塗装をメイクと呼ぶマリーの天然っぷり…相変わらずね。」 リリアンは顔と全身に緑と黄色と黒の迷彩色を施していた。 いつも頭に付けているカチューシャには雑草を挟んでおり、高い樹木の無い薬草の野原ではマリーの所まで《ほふく前進》でたどり着いたのだ。 「あぁ、解りましたぁ!冒険者の訓練なのですねぇ。凄いですぅ」 マリーが納得したとばかりにピョンピョン跳ねる。 全身フリルのドレスなので跳ねる度にふわふわ揺れるついでに、リリアンには嫌味としか思えない程の胸も思い切り揺れている。 「ま、まぁ…そんな感じよ。」 とりあえず自分の境遇説明は後回しで、リリアンはマリーを薬草の野原で待ち伏せしていたのは、実家に帰る前にマリーに様子を見て貰う為なのだが。 先日、首都を出た時に学生寮に財布を忘れたのを思い出して学校に戻った時、重い甲冑に身を包んだ城の衛兵(いわゆるテンプルナイト)に連行されそうになった。その時初めて自分自身が指名手配されている事に気付き隙を見て逃げ出して村外れまで来たリリアンであった。 「なるほどぉ…そういえば道具屋さんにお城の人達が来ていたけど、何か良い知らせなのでしょうかねぇ。」
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