第1章 道具屋の娘

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「…まぁ…仮に女勇者を認めるとして、魔法使いの勇者はどうかと思うぞぃ…しかもリリアン・ローズ君は魔法使い以前の問題じゃろ…」 『魔法が使えるかどうかは些細な問題だと思います!』 「さすがにそれは大問題だとおもうんじゃが…まぁ一応了承した。リリアン・ローズ君!本日をもって魔法学校を退学処分とする!」 『ちょっと国王!それは無いですよ!私魔法免許証貰って無いです!』 リリアンが両手をぱたぱたと振り上げて抗議をしている。 しかし…とても国王と市民との会話とは思えない程の会話だ。 「早合点するでない!リリアン・ローズ君は大穴探索を許可すると同時に仮免許を発行しよう。 万が一生還した場合、学校にて残りの学科の習得を命ずる。」 「…万が一生還って…。」 つまり国王はリリアンが生きて帰れるとは思っていない訳だ。 「ま…まぁ良いわよ!それじゃ教官…じゃなくて国王様、強い武器を頂戴!」 「無いぞぃ!」 「ちょっ…大穴探索に丸腰で行けと?」 「勝手に志願したのはリリアン・ローズ君じゃろが。そもそもボルン国最高の武器は前の勇者に持たせてしまったのじゃ。」 結局…リリアンが国王から貰ったのは、魔法使用仮免許と多少のお金であった。 しかもそのお金には、きっちりと借用書が添付されており、要するに単なる借金である。 「まぁ良いや…こんな事もあろうかと、国王…ジーニアス教官の机から魔法の杖を拝借しちゃったもんねぇ~♪やほぉ~い♪」 リリアンは気楽に盗んだ杖をバトン代わりに振り回しながらボルン国を後にした。 実はリリアンが盗んだジーニアス教官の魔法の杖は国宝であり。 世界に一本しか無い伝説のレジェンパーツと呼ばれるブルークリスタルロッドとはリリアンが知るよしも無かった。 そしてリリアンがその日のうちに首都ボルンを旅立ったのは正解だ。 何故なら次の日には国宝窃盗容疑でお尋ね物扱いにされるからである。 かくして勇者(自称)兼魔法使い(仮免)兼盗人のリリアンは元気良く旅立ったのであった。
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