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透明な執念
私がわざわざ弥勒院(みろくいん)さやかを訪ねたのは、彼女が霊媒師でありながら除霊師であり、しかも浄霊もできるスペシャリストだと聞いたからだった。
たくさんの著書を出版している彼女にアポイントを取るには、最低三ヶ月は待たないとならなかったが、今回は出版社の知り合いに無理を言って、一ヶ月後にアポの予約をねじ込んでもらった。
私の生活は霊に支配されていた。常に誰かに見られているような感覚。幻聴や原因不明の体調不良。夢で追い立てられ、殺される寸前で目を覚ましては、金縛りで動けない毎日。この他にも日常生活では数限りない霊的障害に苛まれていた。
彼女の住む山寺までの道のりは楽ではなかった。タクシーを降りたあと、杉林に囲まれたえらく急な坂を歩かされ、女の足にはとてもこたえる場所だった。
この辛い日々から開放されるならという思いが私を奮い立たせた。
本堂に到着すると雲水がやって来て『松の間』と言う場所に案内された。そこは襖で仕切っただけの小さな部屋で、座布団以外は何もない空間だった。
「しばらくお待ち下さいませ」
雲水はそれだけ言って、そそくさと立ち去った。
じっと正座をしていた。
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