蛍の飛ぶ夜

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あれが一体何だったのか、今でもわからない。 その後2年の交際を経て夫となった彼は、きっと私の見間違いだと笑う。 テレビドラマに出て来る銀行強盗みたいにお面かマスクを被った、ただの変質者だったんだよと。 そうかも知れない。 そうであって欲しいと思う。 でも私は忘れられない。 繋いだあの手の、濡れてひんやりとした感触を。 もしあの時スマートフォンが鳴らなくて、何も気づかずついて行ったら、私はどこに連れて行かれていたのだろう。 あの日以来、蛍は見ないことにしている。
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