最期の日常

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筆者が高校一年の頃、授業の最中に話題が怪談話になったことがあった。これはそのときに先生に聞いた話である。仮にその先生をM先生としておく。 その日の午後授業を終えたM先生が職員室に入ると他の先生達がなにやら騒いでいた。一人に事情を聞いてみるとさっきの授業中に警察から電話があり生徒が一人死んだのでそのことについて今から捜査の為に学校に警察が向かうとのことだった。 しかし騒然としているのはそのことではなく別の理由だったという。 その死んだ生徒というのが今日学校に来ているというのだ。 その生徒のクラスの出席簿を見ると始業前のホームルームからさっき連絡がある前の授業まですべて出席に丸印がある。それに今日そのクラスに授業をしに行った先生全員が確実に居たと証言したのだ。何よりM先生自身今日その生徒がいるのを見ていたのだ。 話はこれでは終わらない。その後警察がやってきて事件のあらましが説明されたときにさらに不可解なことが判明した。生徒が死んだのは昨日や今日ではなく一週間も前だったのだ。もちろんその間も出席簿上では出席していたことになっており授業を担当した先生方は確実に居たと証言していたという。 この話を聞いて一年以上たったある日の古典の授業で別の先生から同じ話を聞いたときにその生徒が一家心中によって亡くなったことが分かった。 まだ生きていたかったのに親の事情によって殺されてしまった生徒が死んでからも日常を過ごしていたと思うと何ともいたたまれない話だ。
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