ハザマ古書店

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     ◆ 田舎に住んでいると、欲しい本がまともに手に入らないことが多い。 楽しみにしていた発売日を迎え、ワクワクした気持ちで一日を学校で過ごしいざ本屋へ! ……と意気込んで足を運べばどこもかしこも未入荷。 全国展開のチェーン店も小さな個人のお店も、コンビニも。 ひょっとしたらの希望に縋り付いてひたすら自転車を漕ぎ続けるも、収穫は無し。 自分が気づかなかっただけで、発売日を間違えただろうかとスマホでサイトを確認すればそんなことはなく。 既に購入したどこかの誰かは、早速通販サイトのレビューに自慢げな書き込みを披露していたり。 この虚しい経験をこれまでに何度繰り返してきたことか。 「あー……早くこんな町出ていきたい。発売日に発売するものくらい普通に買わせてよ、田舎の馬鹿野郎」 梅雨の中休みか、久々に晴れた日の夕暮れ。 心身の疲れにより重くなった足でペダルを漕ぎ、あたしは擦り潰したような呻き声を夕空へ飛ばした。
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