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容貌についてはたまに「日本人っぽくない」と形容される。それが日本人離れした美形という意味なら嬉しいのだが、現実はそう甘くない。体中の毛という毛が強い体質なのか、髪も眉も睫毛も異様に硬くて濃い。今はまだ第二次性徴の途中だから愛嬌がある程度で済んでいるけれど、これが成人して男性ホルモンの分泌が活発になりでもしたら、猿人類並みに濃い見た目になりそうな気配がある。目も鼻も唇も大きい。それがふっくらした丸顔に収まっている。背は低いのにやたら存在感の大きいパーツが集まっているわけだ。
そのアンバランスさは見る人によっては滑稽さをも覚えるらしい。つまり美醜以前に個性が悪目立ちしてしまう容姿といえよう。
さて私は趣味で詩や小説を書いている。それを以前からこのサイトで公開していたわけだが、読んでくれる人はごく少数だった。まあ、中学生の衝動的な感性を言語化しただけの内容に乏しい文章だから、読んだところで感想の持ちようもないだろうが。
今から半年ほど前、二年に進級してすぐの頃だ。出席番号が名前の順だったため、私安藤の後ろの席には伊藤くんがいた。伊藤優希(ゆき)、女子生徒である。
私は男子で一番背が低く、伊藤くんは女子で一番背が高かった。おまけに私は目が悪いのに眼鏡をかけておらず、直後の席替えで前と後ろに席が離れた。その時点で、一度も話したことはなかった。
お互い何の興味も持っておらず、加えてどちらも人と接するのが苦手な性質である。ふつうならそれだけの関係――というより無関係――で終わっていただろう。その関係に転機が訪れたのは、美術の授業だった。
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