第2話:あいつが本屋の王子様?

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「ごめんください」  レジにいた男は、顔をあげるとその女性に向かって優しく微笑んだ。 「いらっしゃいませ。取寄せしていた本、届いてますよ」  顔を見ただけで、名前も聞かずに、男は後ろの棚から本を取り出し、女性に見せた。 「助かります。大きい本屋じゃ探すのが大変で」 「もし来月も購入予定なら、取り置きしておきますよ」 「いいんですか?それならお願いしようかしら」  穏やかに談笑しながらレジを済ませて女性は出て行った。  出ていく女性の背を見ながら、ふと思った。お世辞にも品揃えが良くはないこの小さな本屋に客がいるなんて思わなかったが、もしかしたら今までもあんな風にお客と話しながら本を取り寄せていたりしたのではないかと思った。  大型書店では作業になりがちな対話も大切にできる……。 「で、立ち読み常習犯、おまえは何の用だ」
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