第2話:あいつが本屋の王子様?

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 昨日訪れた時には気づかなかったが、店内には、ちらほらと客がいた。考えてみれば、いつも雑誌コーナーにまっしぐらだった美樹が気づくはずもない。  店に入り、奥をのぞけば、あの男はレジの前で本の整理をしていて、こちらに気づいていないようだった。  あの男から見えない死角を辿りながら、レジ近くの棚まで移動する。料理のレシピ本などが置かれた棚で、美樹くらいの学生がいても不自然ではない。本を探すふりをして、そっと男の顔を確認する。  少し長めの前髪に、整えられていない後ろ髪、細い目元に小さな口元、全体的に小さなパーツで構成された顔がすらりと長い身体の上についている。ジャンル的にはイケメンで、なおかつTシャツから出ている二の腕はほどよく筋肉がついていて、細マッチョ。総合評価はモデル並みのイケメン、上玉だと思う。  外見の良さが、性格の悪さを補っている典型的な例だ、と美樹は妙に納得していた。 (まぁ、二度とここには来ないけど)  気が済んだので帰ろうと背を向けると、子供をおぶった若い母親らしい女性とすれ違った。
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