第4話:王子様のおしごと

4/6
前へ
/26ページ
次へ
「なんか、素直すぎて気持ち悪いな」 「ちょっと!人が真剣に……」  顔を上げれば、男は呆れた表情だったが、意外にその目は穏やかだった。 「少しでも本に興味を持ってくれりゃ、本屋にとってこれ以上嬉しいことはねーさ。まぁ、俺も少し言い過ぎたとこあったし」 「本当よ」 「少しだけな」 「かなりよ、か・な・り!だいたい王子様とか言われてるくせに、本当は口が悪いんだもん。詐欺よね、詐欺」 「あー、それなんとかなんねーの?ったく顔見るだけで帰ってくとか、立ち読みよりタチ悪いわ」 「顔見るだけって……」  確かにこうしてまじまじと見ると、整ったイケメンなのはわかる。そりゃ自分もこんなに口が悪い男だって最初に知らなければ……とよぎって、慌てて首を振る。 「とにかく!これからは本をどんどん読みまくるわよ!」 「まだ一冊読んだだけじゃねーかよ」 「うっるさいわね!」  言葉遣いは変わらないものの、男はわざとこんな言い方をして、美樹の反応を楽しんでいるだけのような気がした。澄ましているよりも、こんな風に歯に着せない物言いのほうが聞いていて楽しい。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加