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「なんか、素直すぎて気持ち悪いな」
「ちょっと!人が真剣に……」
顔を上げれば、男は呆れた表情だったが、意外にその目は穏やかだった。
「少しでも本に興味を持ってくれりゃ、本屋にとってこれ以上嬉しいことはねーさ。まぁ、俺も少し言い過ぎたとこあったし」
「本当よ」
「少しだけな」
「かなりよ、か・な・り!だいたい王子様とか言われてるくせに、本当は口が悪いんだもん。詐欺よね、詐欺」
「あー、それなんとかなんねーの?ったく顔見るだけで帰ってくとか、立ち読みよりタチ悪いわ」
「顔見るだけって……」
確かにこうしてまじまじと見ると、整ったイケメンなのはわかる。そりゃ自分もこんなに口が悪い男だって最初に知らなければ……とよぎって、慌てて首を振る。
「とにかく!これからは本をどんどん読みまくるわよ!」
「まだ一冊読んだだけじゃねーかよ」
「うっるさいわね!」
言葉遣いは変わらないものの、男はわざとこんな言い方をして、美樹の反応を楽しんでいるだけのような気がした。澄ましているよりも、こんな風に歯に着せない物言いのほうが聞いていて楽しい。
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