第4話:王子様のおしごと

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 男は立ち上がり、そのまま棚に向かい、美樹はその後ろをついてゆく。 「まぁ、あれが読めたんだったら、このへんの本ならいけるかな」 「あ、ねぇ、このワタリヒカル?って人の本、他にないの?」 「……あれしかねーよ。一発屋の作家だからな」 「えー、そうなの?あの作者さー、気持ちが優しいと思うのよね。女性かなぁ」 「さあな」  美樹の問いに、男はそっけなく応えて、棚を漁っている。 「でもところどころひねくれてるっていうか、なんか臆病なところがあるのよね」 「悪かったな」  男は、ふと手を止めて美樹を睨んだ。 「え?」 「俺の本、つったろ」 「は!?俺のって、まさかアンタの?」  本の表紙と男の顔を見比べる。ワタリヒカル、これが男の名前なのだろうか。 「本名は渡瀬光(わたせひかる)で、それはペンネームな」 「わ、わかってるわよ!」  まさか書いた本人が目の前にいるとは思わず、思ったそのままを言っていた。
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