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「だったら最初から言いなさいよ!」
「言うつもりなかったんだよ。それ、薄っぺらいから活字初心者にちょうどいいし」
「だーれーが、初心者よ!」
つい最近まで読めなかったことは、すっかり棚に上げている。
「じゃ、あの本、買うわ」
「別に、気を遣わなくたっていいぜ」
「繰り返し読むのに、いちいち借りるわけにはいかないでしょ」
「……何度も読むな」
「何よ、素直に喜びなさいよね!」
男は美樹に背を向けて、再びレジの方に歩いて行く。
美樹は棚を確認し、一冊だけあった同じタイトルの本を持ってレジに向かった。
「はい、これ!買うから!」
レジの前に本を勢いよく置いて、美樹は男をびしりと指差した。
「あと、これからは自分のファンに優しくしなさいよ!」
本屋の王子様は、美樹の言葉にあっけにとられたがすぐに吹き出した。
「何がおかしいのよ!」
「いや、別に……くっ…」
「なんで笑ってんのよ!」
男は美樹の顏を見て、ただ楽しそうに笑った。
<完>
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