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「な、何よ」
「じゃあ、聞くが、おまえはここで本買ったことあるのか?」
「う……」
思えば、ここには立ち読み目的で来ていたので、本を買ったこともない。そもそも欲しい漫画があるときは駅前の大型本屋に行っている。
「だいたい雑誌なんて、中身が見えちまったら、金を出して買う価値ないんだよ。見たいとこだけ見たら買わねーだろ」
確かに、それは男の言うとおりで、何も言い返せなかった。
いつも数人の友達で立ち読みをして、それぞれの記憶力を頼りに頭の中で読んだつもりになって、それで満足している自分がいる。
「だからって急に、読めなくすることないじゃん。それに、今までのおじいさんはそのままにしてくれてたんだけど!」
いつもいるはずのおじいさんは見当たらず、レジにはこの男だけのようだった。そもそも、
無茶苦茶な意見を言っているのはわかっていたが、何か言い返さないとなんだか負けたような気になるのが美樹には耐えられなかった。
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