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あてはなかった。あてもなく、彼は彼の直感で、学校帰りに人目のつかないところで怖い神様のいそうなところを探した。踏切を渡った先、建設途中のマンションの端にひとつの石を見つける頃、彼の体の顔以外にはアザがいくつもできていた。
その石はサッカーボールほどの大きさで、形もそれに近く、半分ほど埋まっている。石は黒かった。磨かれたのか、それとももともとそういう石だったのかはわからないが、ビニールシートに覆われた敷地内でそれはどこか禍々しかった。禍々しいから、彼はこれだと思ったのだそうだ。
「お前は、怖い神様だ」
彼は石にそう言った。
その日は、いじめっ子のリーダーが学校からいなくなりますように、と願った。頭の中で、カン、という何か金属を叩くような音がした。
いじめっ子のリーダーが親の都合で転校するのに一カ月もかからなかった。そしてそれを境に、その取り巻きだったふたりはクラスでいじめられるようになった。彼はそれに関してあまり興味がなかったという。自分がいじめられなくなりすればよかった。両親はそれを神様のおかげだと喜び、彼と両親の溝は広くなった。
両親に相談するより、その石に相談する方が即効性があった。人間関係に関することばかりではない。遠足が中止になればいいとか、お寿司が食べたいとか、そんな些細なことさえ叶ったそうだ。成果は、七割ほどであったという。曖昧な願いも、必然的にそうなったことも含めるから体感的なものだが、それでも七割の願いはかなった。代償として失ったものに心当たりはなかった。
叶う願いをお願いしたときは、いつも頭の中で音がしたという。
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