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「だって、さっきちゃんと立ててこなかったから、また倒れたんだろ」
そう言われて、うなずくしかなかった。確かに彼の言うことは理屈が通っていた。さすがに自分よりも一学年先輩なのだと、負けを認めざるをえなかった。
僕は立ち上がった。
壇に向かって歩いていると、
「倒れないように、しっかりと立てるんだよ」
と後ろから声をかけてきた。
「わかってるよ」
強い口調で言ってやった。偉そうに命令されたことに腹が立ったのだ。
祖母のほほ笑みを目にしながら、立てかける角度を急過ぎず、またゆる過ぎないように調整した。
「これで大丈夫」
僕はトランプが畳の上にまかれているところまで戻り、腰を下ろした。
パタン。
びくっ、として僕は腰を浮かせた。弾かれるように背後を振り返る。
「なんで!」
声を上げてしまった。
遺影がやはり倒れている。
そんなはずはなかった。ちゃんと倒れないようにバランスを確認したのだ。大きな地震でも起きない限り、倒れるわけがない。
さらに、二度遺影を立てかけ直して気づいたことがあった。それは、なぜ写真が写っている面を下にして倒れるのかということだ。壇の上を遺影が滑り、写真の面を上にして倒れるのならまだ理解もできる。しかし伏せっているということは、斜め後ろに傾いている遺影が、起き上がるようにして前に倒れていかなくてはならないことになる。そうだとしたら、自然に倒れてしまっていることにはならないのではないか。そこにはなんらかの力が意図的に働いているのではないだろうか。子供心にも、おかしいと感づいた。
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