9人が本棚に入れています
本棚に追加
100億円の音がする
夏の始まりのその日は、仕事帰りにコンパを設定していた。19時頃から各々の仕事が終わり次第集まりだし、スタートする予定だ。
「パーティの開始とかぶるから~、コンパの途中で次のパーティに行こぉっと♪」
コンパの幹事を引き受けているにも関わらず、めちゃくちゃ自己中心的なスケジュール進行を決行する事に大した罪悪感もなかった。100億円の前では、罪悪感さえもひれ伏す。
ホテルの和食屋で開催されるコンパにウキウキしていた綾花も、100億円パーティの前ではかすんだ。
男友達の幹事に、すぐラインをした。
《ルパン♪お仕事お疲れ様!お電話できる?》
すぐにルパンから電話がかかってきた。さすがだ。何でも相談できて頼りになるその男友達は、1周り以上離れた年齢だが決して偉ぶらず謙虚で、凄く優しい。
『もしも~し、アヤ~♪』
落ち着いた声のトーンだが、いつも軽やかに話す。
『もしも~し♪ルパ~ン♪今度のコンパなんだけどさ~、申し訳ないんだけど、アヤ、途中で抜けても大丈夫~?』
唐突な質問に若干驚きつつも、穏やかに話しを進めてくれる。
『お?ど~した~?』
ここで押さえていたテンションが爆破した。
ルパンの優しさに遠慮なく甘えて、綾花はハイテンションで話しだした。
『100億円のパーティに誘われてさ~♪スタートがかぶるから、パーティには遅れて参加しようかと思って~』
『え~?!100億?!さすがだね、アヤ!またまたそんな話しどこから?』
『お友達に誘われたの~♪せっかくルパンとのコンパなのにゴメンよ~』
『いや~凄い!アヤが途中で帰ったら寂しいけど、そんな事情なら仕方ない。僕はたかが数十億だし...』
『ルパンも十分凄いよぉ!ほんとゴメンねぇ!』
謝っているのに、ハイテンションな綾花は申し訳なさよりワクワクがまさっていた。
最初のコメントを投稿しよう!