第15話 ノンフィクション率60%

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 それは『条件反射』。  俗に『パブロフの犬』などとも言うらしいが、私的にこれを自分にやられるときっと『ひどい』と心で悪態をつくだろう。  人は水音を聞くと、無性に尿意をもよおす事が多い。  特に何時間も夢中になって立ち読みをしていた人にはキツい事だろう。  ためし読みをしなくては購入を決断しにくいのはわかる。しかし厚さ1~2、3cmにもなる読み本をじっくり読破しようとされるのは困るとしか言いようがないのだ。  購入目的のお客様方が棚に近寄れないのだ。  書店員として何とかせねばと思った末の行動だった。 『申し訳ない。なんとかトイレまで頑張って下さい』  この店にはトイレはなく、一番近いのはふたつ上の階にある。 『そしてまたのご来店をお待ちしております』  心でそう詫びながら、私は放送停止のボタンを押したのだった。    了
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