第2章 三人の異端児

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「だから?」  ある日、山嶺と二人、屋上で昼食を摂っていた時だった。母がにぎってくれたおにぎりを頬張りながらそう語る天に、山嶺はふだんの彼らしからぬ厳しい口調で返答した。 「自分が可哀想だから、他人を貶めていいなんてことはない。どころか、絶対にしてはいけないことだと僕は思う」  きっぱりと言い放った山嶺の強い目に気を取られ、ぼーっとしている隙に、天は竜田揚げと卵焼きを強奪された。  あれから早25年が経過しようとしている。 *  冒頭の場面にある通り、天と山嶺はいまだズルズルつき合いが続いていた。  そして道端も、相も変わらず山嶺大好き、対して天のことは気に入らず――だが、三者が一線につながる機会は少なくなかった。  山嶺は著名人を数多く顧客に持つ弁護士事務所の所長、道端は警視庁公安部の出世頭、そして天は――。     南天(なんてん)探偵事務所代表 私立探偵 (みなみ) (たかし)  名刺にはそう刷り込まれている。
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