第1章 探偵は事務所にいる

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「あ、そうだった…………ま、いっか」  ひとり語ちて、天はテーブルの上のリモコンに手を伸ばした。時間が時間だけに、地上波はほぼワイドショー番組しかやっていない。  この種の番組はどれもどんぐりの背比べだ。何チャンネルの某の司会、などといったことはどうでもよくなる。  ちょうど視聴者相談コーナーの時間らしい。司会者がボードを示しながら、ゲストコメンテーターに意見を求めているところだった。  夫の携帯を内緒でチェックしまくっている妻からの相談。眉をよせ、神妙な面持ちで相づちを打ちながら聞き入るコメンテーター。  夫の帰宅が以前より遅く、日常会話も減ってきている。ここ最近、自分が触れようとするとサッと身をかわすそぶりをする。不満タラタラで妻が夫に問い糺すと、残業続きで疲れているから云々―― 〈あなたそれ、ダンナが浮気してるんじゃないかって疑ってるのよね!? だから携帯をチェックするわけでしょ!? バカねー。ご主人のあなたに対する態度を、あなたが自覚しているなら分かるでしょ!? バレてるのよ、あなたがご主人の浮気を疑って携帯チェックしていること。嫌悪感を露骨にして警告しているわけ〉 『……そうね。俺もそう思うわ』
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