謎の本屋と、謎の店員。黒猫のスパイス。

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「う~ん。 軽く目を通しただけですけど、参考になるような記述はなさそうですね。 共同執筆者がいるようなので、その人物について調べてみましょうか?」 こちらの動向を、真剣な表情で眺めてくる相手。 そんなふうに見つめられると胸が高鳴るけれど、もちろん今はそれどころじゃない。 再度、スマホ画面をタップする。 「なるほど。 もう一人の著者は、どうやら、あの幽霊病院の医院長だったようです」 「幽霊病院?」 彼女が不思議そうに首を傾げた瞬間、ガクリ。 頭がもげそうなほど、異常な角度で傾いた。 ひっ、やばい! 慌てて両手で支えて元に戻してあげる。 「大丈夫ですか?」 「はい。 ごめんなさい。 続きを教えてください」 「もう十年も前の話ですが、医療関係者の間では、知る人ぞ知る事件です。 強力な病原菌の院内感染により入院患者が次々と亡くなり、建物全体が隔離され、その後、完全に閉鎖された病院。 たしか、その医院長が騒動について記した書籍も出版されていたはずです。 さっきの棚のあたりを、もう一度、探してみましょう」 そう言って腰をあげると、カウンターの上で欠伸してた黒猫が、小さく鳴いた。
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