謎の本屋と、謎の店員。黒猫のスパイス。

9/11
前へ
/13ページ
次へ
「ありました」 再び探し当てた本を手に、彼女の待つレジに戻る。 「あ、やっぱり。 ここに薬剤耐性のあるウィルスについて触れてあります。 なるほど。 感染死を防ぐため開発された薬の副作用により、当時の患者にも皮膚のただれや壊死などがおこっていたようです。 そして、副作用を抑える新薬についての記述もここに……あっ」 突然、起きあがった黒猫が、ビリッ。 そのページを咥えて破き、そのまま後ろの本棚の上に飛び乗ってしまった。 「何するの? やめて! 返してビビ!」 「ビビっていうの? あの猫の名前」 コクリと頷く彼女。 「ホラ戻っておいで、ビビ。 それ大切な本の一部なんだ。 ご主人様が元に戻るための……」 声をかけた途端、ピョン! 跳ねるようにして本棚の裏側に姿を消した黒猫。 「ちょっと、待って!」 彼女とともに猫を追い、急いで棚の裏手へ回ると、その場所には人影が。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加